+ライヴリポート-Clairvoyants + Andre Matos, 24/10/08, Trezzo sull’Adda (MI) Italy+


2005年、イタリアのメタル雑誌『Flash』のアニバーサリーパーティにアンドレ・マトスがゲスト出演した。イタリアで最も高い評価を受けているIron MaidenのトリビュートバンドThe Clairvoyantsと共演するためだった。ライヴは大盛況の末、幕を閉じた。
あれから3年。アンドレ・マトスが再び同バンドと共演するため、イタリアへやって来た!

ライヴ会場となったLive Clubは、ミラノ県のトレッツォ・スッラッダという小さな町にあった。イタリアではライヴ会場が郊外にあるのは珍しいことではない。今回の会場となったLive Clubも小さな町の工業地区にあった。
21時30分、開場。私は21時30分に会場に到着。サポートバンドの演奏開始が23時ということで、開場の時間から来た人はほんのごくわずか。最前列をゲットするためにやって来た人くらい。私が会場内に入ると、ステージ前の最前列だけはもうすっかり埋まっていた。
待っている間、DJがロックやメタルを大音量で会場に流す。音楽に合わせてスクリーンに映し出されていた画像が日本の日常のショットだったのが、謎。ルーズソックスの学生のショットや、俳優の渥美清氏のおくやみが報じられている新聞のショット、地下鉄サリン事件の指名手配写真など、少々古すぎるのでは? と思った。
暇つぶしにCDを見たり、ビールを飲んだりしていると、人が徐々に集まってきた。サポートバンドの演奏開始時刻が近くなってきた頃、600人くらいの人が集まっていて、会場は程よく埋まっていた。

23時にサポートバンドのTrick Or Treatが演奏を開始。
このモデナ出身のバンドの噂は、今までまったく聞いたことがなかった。初期Helloweenの名曲を演奏するということで、例え演奏が少々お粗末だったとしても楽しめるかなと思いつつお手並み拝見。
そんな考えはすぐに改めさせられた。安定した演奏。マイケル・キスクに似た声質を持った上手いヴォーカル。中でも、ベースの演奏が光っていた。ベースソロでは華麗なテクニックを披露して会場を沸かせた。
フロントマンのアレッサンドロ・コンティは、馬や帽子、ビニールギターなどの小道具を使いながら、楽しいMCで会場の笑いを誘う。そのMCがあまりに長いと、オーディエンスも疲れてきてしまうもの。Trick Or Treatのそれは歯切れが良かった。曲も演奏も、オーディエンスを充分引き付ける内容だったため、会場の流れをすっかり手中に収めていた。ハッピー・パワー・メタル・バンドの名に相応しいステージ。
Helloweenの『守護神伝』時代に限りなく似ているオリジナルソングと、「Dr. Stein」「Eagle Fly Free」「Future World」などの曲を演奏。懐かしのHelloweenの名曲にオーディエンスは沸きあがる。「I Want Out」で大合唱した後、アニメソングでステージを締めた。
イタリアのバンドがカバーするアニソンと言うと、『北斗の拳』や『聖闘士星矢』を想像する方も多いかと思うけど、Trick Or Treatがカバーしたのは『ロビンフッド』。しかもイタリア語バージョン。イタリアのアニソンクイーンが歌う主題歌。子供の頃見た懐かしのアニソンを知らない人はいないわけで、アニソンをカバーしているというのに、盛り上がっていた。
オーディエンスを満足させるステージを披露したTrick Or Treat。「もうすぐあのアンドレ・マトスがこのステージに上がるから、皆、楽しみにね」と言ってステージを後にする。彼らもまた、アンドレ・マトスのステージを楽しみにしているようだった。

24時を少し過ぎた頃、イントロに続いてClairvoyantsのメンバーがステージ上に姿を現した。
この日は11月8日に発売される彼らの1stオリジナルアルバム『Word To The Wise』の発売に先駆けた記念ライヴだった。アンドレ・マトスはこのアルバムにゲスト参加しており、今回ライヴにもゲスト出演することになったわけだ。
ちなみに同バンドは、Iron Maidenのトリビュートバンドとして活動をするときはThe Clairvoyants、オリジナルソングを演奏するときはClairvoyantsと、バンド名を使い分けている。

Clairvoyantsのステージのオープニングを飾ったのは、「Journey Throught The Stars」。Clairvoyantsの1stオリジナルアルバム『Word To The Wise』のオープニングを飾る曲。
オープニングを飾るに相応しい印象的なリフで始まる元気な曲。ただ、長年Iron Maidenのトリビュートバンドをやってきたせいなのか、どうも曲調がIron Maidenのそれに似ている。特に、ドラムスとベースが。
「今日はClairvoyantsのライヴに来てくれてありがとう。皆も知ってるとおり、今日はすごいゲストを呼んでIron Maidenの曲を演奏することになっているんだけど、ゲストを呼ぶ前に僕たちのオリジナルソングにもう少し付き合ってね。僕たちは長い間、Iron Maidenのトリビュートバンドとして、イタリア国内だけじゃなくて外国でもプレイしてきたけど、オリジナルソングにも挑戦することにしたんだ。僕たちの1stアルバム『Word To The Wise』はもうすぐ発売される。それを買ってくれとは言わない。ネットで落としてくれたって構わない。でも、皆がClairvoyantsの音楽から何かを感じ取ってくれれば僕たちは嬉しいよ!」
ヴォーカリストのガブリエーレ・ベルナスコーニのMCにオーディエンスが拍手。音楽に対する愛を感じる言葉だ。
続いて、「The Lone」「The Pain Of Sight」「Sheer Hate」「Back To My Dream」。最後にアルバムタイトル曲「Word To The Wise」。
個人的に、一番最初の曲と一番最後の曲が気に入った。曲は決して悪くはない。演奏も決して悪くはない。むしろ、上手いと思う。特にヴォーカリストはIron Maidenのトリビュートバンドとして初めて観たときから思っていたが、本当に上手い。ただ、このバンドには素晴らしいと思わせるようなオリジナリティのある曲が欠けている。バンド自身がライヴ中言っていた。「トリビュートバンドとして他人の曲を演奏するのは簡単だけど、自分たちでオリジナルソングを書いて演奏することは決して簡単なことじゃない。簡単じゃないからこそ挑戦しようと思ったんだ」と。その向上心と音楽に対する愛を持って、今後頑張って欲しい。

約30分のステージの後、Clairvoyantsのメンバー全員がステージを去る。
イントロに続いて再びステージ上に姿を現すメンバー。そのイントロから、Iron MaidenのトリビュートバンドThe Clairvoyantsのステージが新たに始まることが分かった。
最初の曲は「The Wicker Man」。主に80年代のIron Maidenの曲をプレイするThe Clairvoyantsだが、これは2000年に発売されたアルバム『Brave New World』からの曲。
Iron Maidenトリビュートバンドとしてティモ・コティペルト、ブレイズ・ベイリー、アンドレ・マトス、ヨルン・ランデなど、世界のトップシンガーと共演してきて、オーディエンスやメディアのみならず、競演したトップシンガーたちにも高い評価を受けた自信と誇りがあるのだろう。1曲目から実に貫禄のあるステージだった。長年Iron Maidenのトリビュートバンドとしてプレイしてきたため、オーディエンスをすぐに自分たちのIron Maidenワールドに引き込むのも上手い。一曲目から大合唱。
次の「The Trooper」でも「オーオーオーオーオーオーオーオーオ」のところはお約束の大合唱。Iron Maidenのトリビュートバンドの中でもトップクラスのClairvoyantsのステージは、実に見ごたえがあった。
「さっきも言ったけど、今日はスペシャルゲストを呼んであるんだ。でも実は、スペシャルゲストは1人だけじゃないんだよね。2人いるんだ」というMCに会場が沸く。
「まさか・・・」と私は思った。会場に入る際、チケット売り場で自分の番が来るのを待ってチケットを買おうとしたら、横から割り込んできた図体のデカいおじさんがいた。なんだなんだ? と思っていたら、「バックステージパスを発行してくれ」とおじさん。なるほど、関係者なら仕方がないか、と私は大人しく待つことにした。チケット売り場のお兄さんにパスに入れる名前を告げるおじさん。その名前が、ピーノ・スコットとその関係者らしき人、それから、ジャンルカ・グリニャーニだった。
ピーノ・スコットは、イタリアのメタル界のオジー・オズボーンのような存在の人物。現在59歳で、Fire Trailsというバンドで活動している現役シンガー。TVのロック番組にてVJをしていて、毒舌が特徴。
一方、ジャンルカ・グリニャーニはイタリアのポップロック歌手。イタリアのいわゆる紅白歌合戦=サンレモ音楽祭にも何度か出場したことのあるほどの人気。このライヴの数日前、飲酒運転のため運転免許証を取り上げられたとTVで報じられていた。
まさか、ジャンルカ・グリニャーニがゲストってことはないだろう、という私の期待を裏切らず、「次の曲は今日最初のゲストと一緒に歌うよ。ピーノ・スコット!」とピーノがステージ上に呼ばれた。
オーディエンスは皆、一斉にカメラを取り出してピーノに向ける。会場に「ピーノ」コールが沸き上がった。
「おい、クソ野郎ども」というピーノ独自の挨拶。スラングをふんだんに使いながらも、Clairvoyantsを称える。
そんなピーノと歌った曲は、「Wrathchild」。ピーノは自分の歌のスタイルを用いてこの曲を歌った。とても59歳とは思えないステージング。ライヴの後、本人に「エネルギッシュなステージで、とても私の父と同年代とは思えない」と言うと、喜んでいた。
暖かい歓声のもと、ステージを去るピーノ。「偉大だよなー」、そんな声がオーディエンスの中で飛び交っていた。
The ClairvoyantsはIron Maiden好きにはたまらない曲をまた続けてくる。「The Number Of The Beast」と「Fear Of The Dark」。初めてこのバンドのライヴを観たとき、声がとにかくブルース・ディッキンソンそっくりだと思った。特に、「Fear Of The Dark」を聴いたとき、鳥肌が立ったほどそっくりだと思った。そう感じたのは、今回も同じ。

ピーノ・スコットの登場の後さらに、モッシュや大合唱で会場のテンションが高まった時、「Aces High」のイントロが流れてきて、いよいよアンドレ・マトス登場。会場のテンションはさらに高まる。
歓声とフラッシュの嵐の中歌い始めるアンドレ・マトス。が、マイクの音がなかった。幸い問題はすぐに解決。アンドレ・マトスの最高の声が聞こえてきた。
アンドレは長いツアーの最中は声を制限して歌うものなのだけど、2日限りのこのライヴには、とても良い状態で挑んできた。最後の高音のところも完璧に出す。「Running, scrambling, flying」のところでのガブリエーレがエコーを再現していたのだけど、ピッタリ息が合っていたのが微笑ましかった。
続いて「2 Minutes To Midnight」。流暢なイタリア語のMCを入れて「Flight Of Icarus」。この曲をアンドレは、「次の曲はIron Maidenの古き良き時代の名曲の中の一曲だよ」と紹介していた。今回The Clairvoyantsと歌った曲は、すべてアンドレによって選ばれたのだそう。彼自身がまだ少年だったころIron Maidenの大ファンで、レコードを聴いて一緒に歌ったり、Viperのライヴで演奏した曲ばかりなんだとか。彼にとって思い出深い曲を歌っているからなのだろう。ステージ上の彼はとても楽しそうに見えた。実際に、ライヴ前にも、「このライヴがとても楽しみだよ。皆にも楽しんでもらえると良いな」と語っていた。なんだかプロのシンガーとしてのアンドレ・マトスのステージを見ているというよりも、Iron Maidenの曲が本当に好きで友達とトリビュートバンドとして歌っているアンドレ・マトスのステージを見ている気分にさせられた。プロフェッショナルなステージではなかったという意味ではなくて、ステージ上のアンドレがあまりにも楽しそうで、そんな感じを受けた。
次の「Wasted Years」と「Run To The Hills」は、個人的にアンドレ・マトスが歌っているのを聴くととても感慨深い曲。Angraの初期のライヴでアンドレがよく歌っていた曲で、ブートレッグで何度も聴いた覚えがあるから。アンドレが生でこの曲を歌うのを聴いたのはこれが二度目。もう生で聴けることがないかもしれない曲。そう思って、自分がとても貴重な場面にいることに気づいた。
曲の途中、アンドレとガブリエーレ、オーディエンスの歓声をどちらがより多く受けられるか競っていた。「Scream for me, Live」と英語で言うガブリエーレに対して、アンドレは「Speak for me, Live」という英語に相当するイタリア語で言った。ちょうど良いイタリア語の単語を知らなかったのだろう。それでも英語を使わずに、すべてイタリア語でMCをしようというアンドレの姿勢がとても微笑ましかった。
続いて「Iron Maiden」。Iron Maidenの1stアルバムからの名曲。盛り上がらないわけがない。
「次の曲は、もうすぐ発売されるClairvoyantsのアルバム唯一のカバー曲で、僕がゲスト参加している曲だよ。Iron Maidenの曲の中で僕が一番好きな曲で、Hallowed Be Thy Name」とアンドレが曲を紹介。The Clairvoyantsが2005年に発表したDVDにも、アンドレと共演したこの曲のビデオが入っている。オーディエンスの手拍子の中、大切に歌い始めるアンドレ。オーディエンスも大きな声で一緒に歌っていた。

ステージ上からClairvoyantsのメンバーとアンドレ・マトスが去り、会場にアンドレ・コールが湧き上がる。
前回はここでShamanの「Pride」を演ったが、今回は果たして何を演るのか?
期を図ったのか、アンドレ・コールがいちばん大きいちょうど良いタイミングで「Unfinished Allegro」が流れてきた。すぐに気づいた人々が絶叫。
「Carry Ooooooooooonnn!!!」
アンドレ・マトスにとってこれ以上歌い慣れた曲はないだろう。
近年アンドレの高音が衰えたという話を巷で耳にするけど、この「Carry On」を聴いてまだ尚そんなことが言えるだろうか? 確かに高音の出し方が以前と違う。でも、Angra初期のライヴでアンドレが歌った同曲と今の彼の同曲を聴き比べると、今の方がより深く歌っていて、シンガーとしては今の方が価値があると私は思う。
Clairvoyantsにとっては演奏し慣れていないだろう曲。それでも原曲に忠実に上手い演奏をしていた。この曲をアンドレ・マトスのヴォーカルの元演奏するのは、バンドにとって感慨深かったんじゃないかなと思う。
オーディエンスはこの「Carry On」で一番盛り上がっていた。アンドレ・マトスを生で観たくてやって来た人たちにとって、この曲を生で聴けたことは意外で、とても嬉しいことだったから。

最後はピーノ・スコット、それからオープニングアクトのTrick Or Treatのアレッサンドロ・コンティも招いて「Running Free」。ステージ上に4人もシンガーがいるのを観るのは不思議な感だった。アレッサンドロがお約束のビニールギターを持ってきて、アンドレ・マトスと共に弾く。アンドレはいつものようにステージ上を駆け回っていた。最後の最後までエネルギッシュなステージ。
ステージ上の人たちも、オーディエンスも、皆、このときを楽しんでいた。Avantasiaほどではないにせよ、夢のような共演。そのステージを観ることができた人々は幸運だった。
拍手と歓声の中、Clairvoyantsのメンバーとアンドレたちは挨拶をしてステージから去って行った。人々は口々に、「凄かったな、アンドレ・マトス」「やっぱり一流だよな」などと言っていた。
アンドレ・マトスはもう一度、メタル界のトップシンガーであることをイタリアのファンに証明した。
来年1月、アンドレ・マトスは再び来伊する。今度は自分のバンドを率いて、Edguyのサポートバンドとして。そのライヴに対するファンの期待がますます高まることとなった。

ライヴ終了後は、会場のサイトによると、アンドレ・マトスとの写真・サイン会があるはずだった。
ところがそんな様子はまったく見られず、ファンたちは会場内のバックステージ近くでアンドレを待つ。
やがて、首に白いタオルを引っ掛けたアンドレが登場。ファン一人づつに丁寧に対応。それがあまりに丁寧で、かなり時間がかかり、最後の方は、会場のスタッフが「早く出て行ってください。もう閉めますので」とファンを外に追い出そうとし出した。それがあまりにも露骨になってきたのをアンドレが聞き付け、「じゃあ、この子達と僕も外に出ればそれでいい?」とスタッフに申し出た。それを聞いて、数少ないけど残っていたファンは感動。結局のところ、アンドレが外に出て行く必要はなくなったのだけど、ファンのためにそこまで言ってくれるミュージシャンがどれほどいるだろう? 改めて、アンドレ・マトスの人の良さを感じたエピソードだった。

[The Clairvoyantsセットリスト]
The Wickerman
The Trooper
Wrathchild (+ピーノ・スコット)
The Number Of The Beast
Fear Of The Dark

(以下、アンドレ・マトスと)
Aces High
2 Minutes To Midnight
Flight Of Icarus
Wasted Years
Run To The Hills
Iron Maiden
Hallowed Be Thy Name
Carry On (Angraのカバー)
Running Free (+ピーノ・スコット、アレッサンドロ・コンティ)

source/fonte: http://andrematos.hp.infoseek.co.jp/trezzolive.html

About Janus

Janus Aureus is my recently-inaugurated personal blog (written in portuguese, but with some texts in english as well). Fiore Rouge is my old (but still very active - in fact, more than Janus :P) blog (I started it back in 2005). Mentalize is a fan-made website (since 2005). if you wish to contact me for any reason, visit my blog and leave a comment OR see email above (top left) - no, my name's not Andre - actually, I'm not even a guy! LOL Long story... O Janus Aureus é meu blog pessoal - escrito em português - ainda sem muito conteúdo, pois foi começado no final de dezembro de 2011. Já o Mentalize foi aberto em 2005 e está escrito em várias línguas *rs* Privilegio o uso do inglês ali porque o pessoal estrangeiro não tem muitas informações sobre o AM. Quem quiser entrar em contato comigo por qualquer motivo, deixe um comentário nos meus blogs ou use o email que está aí em cima à esquerda (e não, eu não sou o Andre - aliás, sou mulher!).

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out / Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out / Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out / Change )

Google+ photo

You are commenting using your Google+ account. Log Out / Change )

Connecting to %s